家賃収入があれば、将来の選択肢を増やせるかもしれない。けれど、そのために今の仕事を危うくする判断はしたくない。公務員として不動産投資を調べると、最初に気になるのは「自分がやってよいのか」ではないでしょうか。
公務員も不動産を賃貸できる場合があります。先に分けるのは、国家公務員か地方公務員か。そして、承認・許可が必要な賃貸に当たるかです。
国家公務員の基準は2026年4月に変わりました。「家賃収入は年間500万円未満」「5棟10室までは大丈夫」といった数字だけで決めず、自分の所属先に適用される規定から確認していきます。
最初に、国家公務員と地方公務員を分ける
| 自分の区分 | 最初に見る資料 | 確認する窓口 |
|---|---|---|
| 国家公務員 | 人事院規則14―8の運用通知と所属府省の内規 | 所属組織の人事・服務担当 |
| 地方公務員 | 地方公務員法38条と、所属先の兼業・服務の規則 | 所属自治体・任命権者側の人事・服務担当 |
この記事は主に常勤の一般職を想定しています。非常勤や特別職などは適用が異なるため、任用形態も伝えて確認してください。教員・警察官・消防職員なども、職種名だけで同じ窓口・手続きと決めず、所属先の案内を見ます。
「公務員のお客様もいます」という不動産会社の説明は、自分の所属先が許可する根拠にはなりません。会社には物件と管理の資料を、所属先には適用規定と手続きを確認する。この役割を分けると、誰に何を聞くかが整理できます。
国家公務員:2026年4月からの基準を確認する
2026年4月1日から、国家公務員の自営兼業制度が見直されました。不動産等の賃貸では、賃料収入による基準が年額1,000万円以上へ変わり、建物だけを貸す場合の床面積条件も加わっています。人事院の改正案内
ただし、「1,000万円未満なら申請不要」という意味ではありません。棟数・室数などは、それとは別の条件です。現行通知では、次のいずれかに該当する賃貸を、承認が必要な「自営」として扱います。
| 確認項目 | 自営に該当する条件 |
|---|---|
| 独立家屋 | 5棟以上 |
| 独立家屋以外の建物 | 貸すことのできる独立した区画が10室以上 |
| 土地 | 賃貸契約が10件以上 |
| 特定の用途 | 劇場・映画館などの娯楽設備を備える不動産や、旅館・ホテルなど特定業務用の建物 |
| 駐車場 | 10台以上、または建築物・機械設備を設けた駐車場 |
| 賃料収入 | 年額1,000万円以上。建物の賃貸だけの場合は、総床面積600㎡以上も必要 |
| その他 | 不動産や駐車場の規模・形態について、上記と同様の事情があると認められる場合 |
根拠は人事院の現行運用通知・第1項関係4です。不動産と駐車場の両方を貸している場合、賃料収入は合算します。600㎡の条件は「建物の賃貸だけ」の場合に限られ、土地や駐車場を含む賃貸へ一律に付け足すものではありません。
人事院のQ&Aでは、これらの条件のいずれにも当たらない小規模な賃貸は申請不要と説明しています。これが国の一般的な基準です。そのうえで、所属府省の内規や、自分のケースで判断に迷う点を人事・服務担当に確認します。
「10室」と「1,000万円」は別々に見る
たとえば、貸せる部屋が10室あれば、年間賃料が600万円でも室数の条件に当たります。1,000万円に届かないことだけを理由に、申請不要とは判断できません。
一方、建物だけを貸し、9室・総床面積650㎡・年間賃料1,100万円という例なら、室数が10室未満でも賃料と床面積の条件に当たります。600㎡未満ならこの賃料条件からは外れますが、棟数や用途など、ほかの条件の確認は残ります。
いずれも条件の読み方を示す例です。部屋数は現在の入居世帯数ではなく、貸すことができる独立区画の数。賃料収入は、ローン返済後に手元へ残るお金と取り違えないよう、賃貸料の年額で整理します。
管理会社へ任せれば、自動的に承認されるわけではない
規模の条件に該当しても、そこで「投資できない」と決まるわけではありません。承認を受けるための確認へ進みます。人事院の通知は、不動産等賃貸の承認について、次の3点すべてを求めています。
- 自分の職務と賃貸事業の間に、特別な利害関係やそのおそれがないこと。
- 募集・集金・維持管理などを事業者に委ねること等により、本業に支障が出ないことが明らかであること。
- 公務の公正性・信頼性を損なわないこと。
「管理を任せる予定です」から、もう一歩具体化します。入居者からの連絡、滞納時の対応、設備が故障したときの連絡を、誰が受けるのか。勤務中に自分が対応する前提が残っていないか。こうした管理方法を説明できる資料を用意します。
委託範囲が曖昧なら、不動産管理会社の業務・費用・報告の確認項目で整理してください。管理の契約を結ぶことと、所属先の承認を得ることは別の手続きです。
地方公務員:国家公務員の数字をそのまま使わない
地方公務員は、地方公務員法38条に基づく任命権者の許可と、所属先の規則を確認します。「国家公務員と同じ条件だろう」と読み替えると、申請が必要な賃貸を見落とす可能性があります。
具体例として、伊賀市の2026年1月作成のガイドラインは、建物・土地・駐車場などを貸して収入を得る場合、収入額等にかかわらず許可を求めています。国家公務員の棟数・駐車台数などの基準を、伊賀市では適用しないことも明記されています。伊賀市の規則・申請案内、ガイドライン3ページ
これは伊賀市の対象職員についての例で、他の自治体も同じという意味ではありません。同じ規模の賃貸でも確認が変わるため、最初の質問は「何室まで買えますか」より、「私に適用される不動産賃貸の規定と、申請が必要になる条件を教えてください」が適切です。
所属先へ相談する前に、1枚のメモを作る
規則を読んでも判断に迷うなら、物件探しを進める前に、分かっている条件を人事・服務担当へ伝えます。人事院のQ&Aも、正式な申請前に所属組織の人事担当者へ相談する流れを勧めています。人事院の兼業Q&A・問2
| メモすること | 記入する内容 |
|---|---|
| 自分の立場 | 所属、職務、任用形態 |
| 貸す予定のもの | 建物・土地・駐車場の区分、既存分と追加分、棟数・室数・台数・床面積 |
| 賃料収入 | 物件ごとの年額と合計。分からないものは未確認と記入 |
| 管理の方法 | 誰が募集・集金・入居者対応・修繕対応を担うか |
| 名義と関与 | 所有者、共有の有無、自分が実際に行う業務 |
| 確認したいこと | 適用規定、申請の要否、必要資料、申請時期、内容変更時の手続き |
国家公務員の不動産等賃貸の申請では、登記簿・図面、賃料を明らかにする資料、管理方法を示す書面などが求められます。ただし、相談用の資料をそろえるために、先に売買契約や管理契約を結ぶ順序にはしません。購入前の段階で出せる資料と、追加提出する資料を窓口で確かめます。
家族との共有なら、持分だけで室数や賃料を自己判断せず、登記と実際の関与を伝えてください。国家の通知では、他人名義でも本人が事業を営むと客観的に判断される場合を含みます。「家族名義なら問題ない」という進め方は避けます。
規定を確認したら、家賃収入の仕組みを学ぶ
勤務先の手続きと、お金が残る物件かどうかは別の問いです。承認・許可を受けたことだけで、返済や修繕の負担まで解決したわけではありません。
まだ物件を買う予定はなく、仕組みから知りたい段階なら、購入用の書類を一式そろえる必要はありません。自分に適用される規定を把握しながら、学習を進めます。
家賃から費用と返済を引くと何が残るのかを知りたい人は、利回り・費用・返済の関係から。本で全体像をつかみたい人は、知りたい内容で選ぶ不動産投資の本3冊が入口になります。
質問しながら学ぶほうが進めやすいなら、不動産投資セミナーの内容・質問可否・参加形式を比較してください。講義で聞くのは収支や管理などの疑問。自分の職場で許可されるかの確認は、所属先へ戻します。
よくある質問
公務員は5棟10室までなら無許可でよいですか?
その説明だけでは判断できません。国家公務員では独立家屋5棟以上、独立家屋以外の建物10室以上が、それぞれ自営に該当する条件です。賃料や用途など別の条件もあり、地方公務員は所属先の規則を確認します。「以下」と「未満」も区別してください。
国家公務員の年間500万円という基準は今も使いますか?
現行の賃料収入による基準は、2026年4月から年額1,000万円以上へ変わっています。建物だけを貸す場合には総床面積600㎡以上という条件も伴います。ただし、棟数・室数などによる該当条件は別に残っています。旧基準で承認済みの人には経過措置もあります。2026年4月1日時点で改正後の自営に該当しなくなる事業の承認は、同年3月31日限りで効力を失うと定められています。改正通知の1ページ目を確認し、承認済みの人は自分の記録の扱いを所属先で確かめてください。
相続した物件や、転勤で空いた自宅なら申請不要ですか?
国家公務員のQ&Aは、相続した賃貸物件も規模等で判断するとしています。転勤で空いた自宅は基本的に申請不要と説明していますが、自営に当たる規模なら承認が必要です。ほかにも貸している物件がある場合は合算して判断します。地方公務員は、相続や自宅賃貸についても所属先の扱いを確かめてください。
公務員なら有利なローンを組めますか?
職業だけで融資の可否や条件は決まりません。所属先の兼業確認と金融機関の審査を分け、借入を検討する段階で実際の条件を確認します。「公務員だから買える」という説明を、購入の判断に置き換えないでください。
制度・資料の確認日:2026年9月15日。まずは自分の所属先の規定名と、相談窓口を一つ確かめる。物件を選ぶ前に、そこから始めてください。
